東京高等裁判所 昭和43年(ラ)222号 判決 1968年6月19日
抗告人 株式会社足利銀行
右代理人 武井博
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の要旨は「原決定を取消し、さらに相当の裁判を求める」というのであり、その理由は、本件競売の対象たる土地及び建物は、本件根抵当権の共同担保となっているものであるが、土地が建物の敷地である関係上建物のみが競売されるとその競落人によって土地の競売が妨害され、競売価額の低下を招来し、本件根抵当権の被担保債権全額が満足をえられない程の廉価でなければ競売できなくなることが予測され、本件建物のみの競落を許可する原決定により根抵当権者たる抗告人は損失を被るので本件即時抗告に及んだというのである。
しかしながら、本件根抵当権の共同担保の目的たる土地及び建物が所有者を異にし、かつ、土地が建物の敷地となっている事実から直ちに両者を一括競売しなければ建物の競落人が土地の競売を妨害し、その競売価額の低下を招来すると断定することはできない。なお、本件においては、建物のみの競売の結果法定地上権が発生する関係にあることは認め難いし、記録添付の大島信策作成賃貸借取調報告書によるも本件土地は本件建物の敷地として使用されてはいるけれども賃貸借関係が存在しないことが認められるので、法定地上権又は賃借権によって土地の競売価額の低下をもたらすともなし難い。しかるところ、記録によれば本件根抵当権の被担保債権極度額は元本一五〇万円及びこれに対する日歩金四銭の割合による遅延損害金であって債権額は金一五〇万円及びこれに対する昭和四一年四月一七日以降完済までの日歩金四銭の割合による遅延損害金であるところ、本件土地及び建物には右根抵当権より先順位の担保物権が存在しないことが明らかであるから、記録によって認められる、昭和四三年三月六日の競売期日における本件建物の最低競売価額が一二五万三〇〇〇円(競落価額も同額)、本件土地の最低競売価額が一五七万一〇〇〇円である事実を参酌すると本件建物のみを個別に競売することによって本件土地の競売価額が著しく低落し、債権者たる抗告人がその債権の満足を得られなくなるとの主張は首肯できない。また、本件記録を精査するも原決定を取消すべき事由が認められない。<以下省略>。